ネック・ヒール部クラックリペア(フィンガーボード脱着)


ギターにアクシデントはつきものです。

コンッと角に当ててしまうことから、ボコッと穴を開けてしまうこと、そしてバキッとネックを折ってしまうこともあります。

ギターはどんな状態になっても「私を弾いてください」とプレイヤーを一途に待ち続けていると信じています。

今回はネック接合部に大きな力が加わったと思われるアクシデント・ケースで、

 ・ ネック・ヒール部の割れ
 ・フィンガーボードの浮き

のリペアをご紹介します。

リペア前の状態確認

ヒール部分このように根本から割れています。
周囲には瞬間接着剤で応急処置した跡が見られます。


フィンガーボードもミドルフレットからハイフレットにわたって
浮いています。(1弦側から6弦側へ貫通しています)


ギターリペアには、ある程度の定石がありますが、ケースバイケースで臨機応変な対応が必要になるときがあります。

このケースの場合、最も大きな障害は応急処置の瞬間接着剤が
割れ目の中で固着していることです。
フィンガーボードの取り外し

リペア方針はフィンガーボードを取り外し、ヒール部を接合した上で、フィンガーボードを再接着する、ということにしました。


これはネックヒーターという治具で、ネックの矯正に用いられます。
フィンガーボードの接着材を暖めて柔らかくする効果があります。


ギターのパーツを接着している「ニカワ」は熱で溶解する
という特性を持っています。


サウンドホール側はトップ板が柔らかい部材を使用していますので、
ゆっくり、慎重に外していきます。


フィンガーボードの接着面が暖かいうちに
取り外しを終えるようにします。

フィンガーボードの取り外し完了です。
予想以上の量の瞬間接着剤が見られます。

トラスロッドです。取り外しておきましょう。

ロッド調整用のナットです。本来は六角形の凹みですが、角がすり減り、丸いくぼみになってしまっています。こちらは部品交換しましょう。
ネックヒール部の接合

ヒール部割れの中の瞬間接着剤をスクレイパーで削り出します。
表面塗装部を傷つけないように慎重に内部を削ります。


ネックを本来の位置に矯正します。
この状態でヒール部接合の
ボルト穴を開ける必要があります。


ネックの矯正位置は直定規で確認しながら行います。
間違っても引っ張りすぎないように!


矯正治具は市販されているクランプとひも、そして継ぎ手です。

ヒール部にドリルで穴を開けます。この穴を通してボンドを注入し、
さらにネジ止めしますので、ネジの長さまで彫り込みます。

スポイトを使ってタイトボンドを穴に流し込んでいきます。

ヒール部割れ目からあふれ出るまで流し込みます。

さらにスクレイパーを使ってボンドを割れ目に均一に塗り込んでいきます。

再びネックを矯正位置に引っ張ります。


矯正した状態でネジ止めします。
さびないようにステンレス製のネジを使用しましょう。


ロープのテンションとネジ止めの締め付けでボンドがあふれてきます。

このまま一昼夜乾燥させるとヒール部の接合が完了します。
フィンガーボード再接着

フィンガーボード裏をスクレイパーでならしていきます。

ネック側も同様にならしていきます。特に古い接着剤の跡は完全に取り除きます。

トラスロッドについた接着剤後も取り除きます。

ネックにトラスロッドを装着します。

ロッドのナットも新調したものです。

フィンガーボードの接着準備完了です。

フィンガーボードの接着にはHideGlue(ニカワ)を使用します。
前もって湯煎しておきます。

接着後のクランプ類もスタンバイしておきます。

ネック側に少し多めにHideGlueを流していきます。

それをヘラで均一に延ばした後・・・。

フィンガーボードをネックに一旦乗せ、Glueが裏に均一に塗られるようにします。

これはフィンガーボードクランプ用のバンドです。

クランプ・バンド類で固定し、Glueの乾燥を待ちます。

トップ板上はクランプで固定します。

接着後のフィンガーボードです。

フィンガーボードの浮きは完全になくなりました。